2017年6月1日木曜日

温室でみた夢

お正月の読書の一冊、久世光彦・著「悪い夢」。何度も繰り返し借り続け、やっとこ読了。

悪い夢―私の好きな作家たち

「亂歩へ還る」「悪い夢」を読み、思い出した。著者が五歳で江戸川乱歩に取り憑かれたように、私にも夢をみる場所があった。それは悪い夢、というよりも自分を抱きしめるような夢だった。


温室で夢をみていた。母の旧友宅。そのお宅の庭には古い温室があり、広さはなかったけど二階建てで半地下まであった。雪がちらつく中、むせるような緑と土の香り。突然あらわれる色あざやかな花。塗装の剥げた螺旋階段、床に落ちて割れた鉢の破片、廃墟的要素にも惹かれた。モーターの音だけが響く密閉された空間。そこから外を眺めていると、没落貴族の老婦人のようだったし、見捨てられた宇宙コロニーに居るようでもあった。


以来、そのお宅へ行くとずっと温室で遊ばせてもらっていた。季節はいろいろで広い庭からその温室を眺めるだけの時もあった。絵ばかり描いていた子供だったけれど、ここで絵を描きたいと思った記憶はないし、絵も残ってはいない。絵を描く必要がなかったのかもしれない。


母が他界してからその方との縁も徐々に遠くなってしまった。あの温室はどうなっているのだろう。マンションが建っていたりして。コモンスペースに温室。それもいいな。それともあのままなのだろうか。ああ、窓から小さな子供がこちらを見ている。目を閉じ、そんなことを夢みている。

植物との距離。その違和感が解けた気がした。
かわいい私のお子ら。でもやっぱ、違う。うわあああああ!!!だ。